この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第44章 第十六話 【睡蓮】 弐

京屋には、心底から市兵衛の身を思う人間は、誰一人としていないのだろうか。今、この瞬間にも市兵衛は生きようと懸命に闘っているというのに、真からあの人を憂える者はおらず、誰もが目先の欲ばかりを追いかけている。皆が考え、話し合っているのは、市兵衛にもしものことがあったとき―つまり、市兵衛が亡くなった後のことばかりだ。
こんなときこそ、せめて傍にいて自分が守ってあげたい。お彩は切ないほどにそう思う。
ある夜、お彩は夢を見た。
真っ暗な闇の中に、お彩は一人立っている。
どこか遠くからすすり泣きの声がかすかに響いてくるのに、お彩は、そちらに行こうとする。泣き声の主は子どもらしい。お彩は最初、それがお美杷の声かと思ったけれど、どうやら、声はもう少し大きい子のものらしい。
こんなときこそ、せめて傍にいて自分が守ってあげたい。お彩は切ないほどにそう思う。
ある夜、お彩は夢を見た。
真っ暗な闇の中に、お彩は一人立っている。
どこか遠くからすすり泣きの声がかすかに響いてくるのに、お彩は、そちらに行こうとする。泣き声の主は子どもらしい。お彩は最初、それがお美杷の声かと思ったけれど、どうやら、声はもう少し大きい子のものらしい。

