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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第43章 第十六話 【睡蓮】 壱

市兵衛は血の海の中に倒れていた。それでも気丈に己れを励まして、提灯の明かりを頼りに市兵衛の怪我の状態を確かめてみる。手足には特にこれといった怪我はないようだ。
そのことに少しだけ安堵する。そこで、泰助の視線がはたと止まった。
あろうことか、市兵衛は頭部から大量の血を溢れさせていた。こめかみがぱっくりと割れて次々に鮮血が止まることなく溢れている様は、まるで石榴の熟した果実を思わせた。
江戸中の女を振り向かせ、泣かせるという市兵衛の美貌は血に彩られて、凄惨でさえある。
「旦那さま―」
あまりの惨状に、泰助はヒと短い悲鳴を上げて、尻餅をついた。蒸し暑さを感じる夏の夜のはずなのに、恐怖に膚が粟立ちそうになる。その弾みに提灯が地面に落ち、ふっと消えた。
そのことに少しだけ安堵する。そこで、泰助の視線がはたと止まった。
あろうことか、市兵衛は頭部から大量の血を溢れさせていた。こめかみがぱっくりと割れて次々に鮮血が止まることなく溢れている様は、まるで石榴の熟した果実を思わせた。
江戸中の女を振り向かせ、泣かせるという市兵衛の美貌は血に彩られて、凄惨でさえある。
「旦那さま―」
あまりの惨状に、泰助はヒと短い悲鳴を上げて、尻餅をついた。蒸し暑さを感じる夏の夜のはずなのに、恐怖に膚が粟立ちそうになる。その弾みに提灯が地面に落ち、ふっと消えた。

