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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第43章 第十六話 【睡蓮】 壱

ややあって、自分の胸中に浮かんだ不吉な考えを追い払うように、烈しく首を振った。
「旦那さま、旦那さま、しっかりなさって下さいまし」
泰助はしゃがみ込んで、市兵衛の顔を覗き込んだ。あまりに烈しく揺さぶるのもどうかと思い、とにかく意識があるかどうかを確かめようと必死に呼びかけた。
が、幾度呼びかけても、市兵衛は返事どころか、眼を開けさえしない。
主の様子をもっとよく見ようと泰助は提灯をかざした。倒れた市兵衛の周囲の地面には、黒々としたものがひろがっている。泰助は片手の提灯をなおいっそう市兵衛に近づけ眼を凝らした。その瞬間、その地面をどす黒く染めているものが大量の血だと気づき、仰天した。
「旦那さま、旦那さま、しっかりなさって下さいまし」
泰助はしゃがみ込んで、市兵衛の顔を覗き込んだ。あまりに烈しく揺さぶるのもどうかと思い、とにかく意識があるかどうかを確かめようと必死に呼びかけた。
が、幾度呼びかけても、市兵衛は返事どころか、眼を開けさえしない。
主の様子をもっとよく見ようと泰助は提灯をかざした。倒れた市兵衛の周囲の地面には、黒々としたものがひろがっている。泰助は片手の提灯をなおいっそう市兵衛に近づけ眼を凝らした。その瞬間、その地面をどす黒く染めているものが大量の血だと気づき、仰天した。

