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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第43章 第十六話 【睡蓮】 壱

が、その時、太夫が市兵衛に縋り付いて言った。
―たとえ、お前さんがどこの誰を想うとありんしたとて、このあちきの胸の内は変わりはしいせん。ならば、このままでも良いから、私の傍にいておくんなんせ。
たとえ男女の仲ではないとしても、抱いて貰えずとも、傍にいて欲しい―、その若菜太夫の言葉は市兵衛の心を衝いた。あるいは、もし、太夫と出逢うのがお彩と出逢う前であったとしたら、また市兵衛の心のあり様も変わったかもしれない。だが、市兵衛は既にその時、お彩に夢中であった。その頃、市兵衛がお彩を一膳飯屋「花がすみ」で見かけてから、三年が経っていた。
―たとえ、お前さんがどこの誰を想うとありんしたとて、このあちきの胸の内は変わりはしいせん。ならば、このままでも良いから、私の傍にいておくんなんせ。
たとえ男女の仲ではないとしても、抱いて貰えずとも、傍にいて欲しい―、その若菜太夫の言葉は市兵衛の心を衝いた。あるいは、もし、太夫と出逢うのがお彩と出逢う前であったとしたら、また市兵衛の心のあり様も変わったかもしれない。だが、市兵衛は既にその時、お彩に夢中であった。その頃、市兵衛がお彩を一膳飯屋「花がすみ」で見かけてから、三年が経っていた。

