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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第43章 第十六話 【睡蓮】 壱

【壱】
漆黒の闇が辺り一面に満ちているこの時刻、江戸八百八町は深い眠りの底で静まり返っている。流石に深夜を大幅に回った頃ともなれば、昼間は大勢の人々が行き交う目抜き通りも人影どころか犬の仔一匹の姿さえ見かけられない。その闇に塗り込められた道を、提灯に照らされた二つの人影がゆらゆらと頼りなげに揺れながら動いていた。
どちらも長身の男らしく、暗い地面に落ちた影は長い。とりわけ、二人並んだ男の後方は上背があるようだ。
漆黒の闇が辺り一面に満ちているこの時刻、江戸八百八町は深い眠りの底で静まり返っている。流石に深夜を大幅に回った頃ともなれば、昼間は大勢の人々が行き交う目抜き通りも人影どころか犬の仔一匹の姿さえ見かけられない。その闇に塗り込められた道を、提灯に照らされた二つの人影がゆらゆらと頼りなげに揺れながら動いていた。
どちらも長身の男らしく、暗い地面に落ちた影は長い。とりわけ、二人並んだ男の後方は上背があるようだ。

