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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第42章 第十五話 【静かなる月】 其の四

お彩は、花里が三國屋の若い衆仙吉とわりない仲なのを知っている。花里は、お彩の言葉の陰に隠された意味をすぐに悟ったようで、涙ながらに頷き返した。
駕籠が動き始める。
見送りの人の中には、遣り手のおしがもいた。
お彩にさんざん嫌がらせをした同じ部屋持ちの葛葉や九重の顔も見えた。
吉原の町が遠くなってゆく。お彩がいたのは半月ほどだったけれど、たったわずかの期間に、お彩は苦界と呼ばれる世界の底で、したたかに生きる女の強さと、同時に悲哀をかいま見た。
やがて、駕籠は速さを増し、火灯し頃の不夜城は直に見えなくなった。
この日、三國屋の部屋持ち女郎山吹は、いなくなった。
駕籠が動き始める。
見送りの人の中には、遣り手のおしがもいた。
お彩にさんざん嫌がらせをした同じ部屋持ちの葛葉や九重の顔も見えた。
吉原の町が遠くなってゆく。お彩がいたのは半月ほどだったけれど、たったわずかの期間に、お彩は苦界と呼ばれる世界の底で、したたかに生きる女の強さと、同時に悲哀をかいま見た。
やがて、駕籠は速さを増し、火灯し頃の不夜城は直に見えなくなった。
この日、三國屋の部屋持ち女郎山吹は、いなくなった。

