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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐

「お願いです。教えて下さい。竹庵先生は、今度また、同じようなことがあって、旦那さんが大きな衝撃を受けたりしたら、生命の保証はないって言われました。だから、もし、それが未然に防げることなら、どんなことをしてでも食い止めたいんです」
流石にその言葉は、おとみの心を打ったようであった。おとみは細い眼を瞠った。
「あの先生、そんなことを言ったのかい」
しばし考え込むような様子を見せていたおとみがやるせなさそうに吐息を洩らした。
「全っくひどい話だよ。私しゃア、この歳になるまで色んな人を見てきたけど、富久三(ふくぞう)ほどの悪党は、この広い江戸中を探したって一人もいやしない。きいさんの人の好いのをさんざん利用しやがったのさ」
流石にその言葉は、おとみの心を打ったようであった。おとみは細い眼を瞠った。
「あの先生、そんなことを言ったのかい」
しばし考え込むような様子を見せていたおとみがやるせなさそうに吐息を洩らした。
「全っくひどい話だよ。私しゃア、この歳になるまで色んな人を見てきたけど、富久三(ふくぞう)ほどの悪党は、この広い江戸中を探したって一人もいやしない。きいさんの人の好いのをさんざん利用しやがったのさ」

