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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐

そのことをよく知るお彩は別段、心配はしていなかった。果たして、喜六郎をひと目見た竹庵は難しい顔になった。すぐさま人を呼んで、二階まで運ぶように指示を出す。お彩は再び金物屋まで走り、主人の伍平を呼んできた。
伍平は三十五、六にはなるであろう、好人物だ。いつも女房の尻に敷かれっ放しだが、夫婦仲は極めて良い。とりあえず伍平が喜六郎を抱え上げ、「花がすみ」の二階まで運んだ。喜六郎の寝室にのべた夜具にそっと横たえてやった時、喜六郎が初めて薄く眼を開いた。
「旦那さん、大丈夫ですか?」
お彩が嬉しさと安堵のあまり涙ぐんで声をかけると、喜六郎は存外にしっかりした口調で応えた。
伍平は三十五、六にはなるであろう、好人物だ。いつも女房の尻に敷かれっ放しだが、夫婦仲は極めて良い。とりあえず伍平が喜六郎を抱え上げ、「花がすみ」の二階まで運んだ。喜六郎の寝室にのべた夜具にそっと横たえてやった時、喜六郎が初めて薄く眼を開いた。
「旦那さん、大丈夫ですか?」
お彩が嬉しさと安堵のあまり涙ぐんで声をかけると、喜六郎は存外にしっかりした口調で応えた。

