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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参

「そんな、安五郎さんを嫌うだなんて」
お彩が慌てて言うと、安五郎はニヤリと笑った。
「いつかまた、どこかであなたにお逢いするのを愉しみにしています。そのときは、お互い、いっぱしの板前としてお眼にかかりましょう」
それから、二人はしばらく黙って池に映る紅葉の影を眺めていた。
晩秋の風がさわさわと樹の葉を揺らし、その度に色づいた葉が風に舞い、水面に落ちる。
こうしていると、江戸の町の喧噪が嘘のような静寂であった。
ふいに冷たいものを頬に感じ、お彩は空を見上げた。重なり合った鈍色の雲間から、雨滴が落ち始めている。
お彩が慌てて言うと、安五郎はニヤリと笑った。
「いつかまた、どこかであなたにお逢いするのを愉しみにしています。そのときは、お互い、いっぱしの板前としてお眼にかかりましょう」
それから、二人はしばらく黙って池に映る紅葉の影を眺めていた。
晩秋の風がさわさわと樹の葉を揺らし、その度に色づいた葉が風に舞い、水面に落ちる。
こうしていると、江戸の町の喧噪が嘘のような静寂であった。
ふいに冷たいものを頬に感じ、お彩は空を見上げた。重なり合った鈍色の雲間から、雨滴が落ち始めている。

