この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参

お彩は物心つくかつかない頃から、両親に連れられて、しばしばこの随明寺に足を運んだ。父伊八も母お絹も信心深い人で、お彩も自然に御仏を敬うものだと教えられて育った。今、両親はこの広い境内地の片隅でひっそりと永遠(とわ)の眠りについている。お彩は月に一度は必ず両親の墓参りに訪れていた。
お彩と安五郎は特に話すこともなく、ただ並んで歩いた。長くて急な石段を昇り切ると、山門が見えてくる。あまりに急な坂で女子どもや年寄りは休み休みながらでなければ昇れぬことから、通称「息継ぎ坂」と呼ばれている。山門を抜け、金堂の前で神妙な顔で手を合わせ、更に三重ノ塔の側を通り過ぎた辺りからは滅多と他の参詣客の姿が見なくなる。
お彩と安五郎は特に話すこともなく、ただ並んで歩いた。長くて急な石段を昇り切ると、山門が見えてくる。あまりに急な坂で女子どもや年寄りは休み休みながらでなければ昇れぬことから、通称「息継ぎ坂」と呼ばれている。山門を抜け、金堂の前で神妙な顔で手を合わせ、更に三重ノ塔の側を通り過ぎた辺りからは滅多と他の参詣客の姿が見なくなる。

