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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参

随明寺は黄檗宗の名刹で、開基は浄徳大和尚。春は桜、この時季は紅葉の名所としても名高い。広い境内には、諸伽藍が点在しており、浄徳大和尚の命日である月に一度の縁日市には露店が所狭しと建ち並び、大勢の参詣人で賑わう。
殊に先月―十月の縁日市は「大祭」と呼ばれ、あまたの僧侶が本堂で読経を捧げた後、回廊から紅白の餅を参詣客に向かって投げる。この餅にはそれぞれ「寿」、「福」、「浄」、「徳」の四文字が入っており、「浄」、「徳」の餅はわずか数個しか含まれていない。開祖の浄徳大和尚の名前の刻印された餅を得た者は、その年一年の幸いを約束されると云われていた。
殊に先月―十月の縁日市は「大祭」と呼ばれ、あまたの僧侶が本堂で読経を捧げた後、回廊から紅白の餅を参詣客に向かって投げる。この餅にはそれぞれ「寿」、「福」、「浄」、「徳」の四文字が入っており、「浄」、「徳」の餅はわずか数個しか含まれていない。開祖の浄徳大和尚の名前の刻印された餅を得た者は、その年一年の幸いを約束されると云われていた。

