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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第36章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の弐

今度は長い静寂があった。
安五郎はと見れば、随分と考え込んでいるようだ。無理もない話だと喜六郎は思った。つい数日前には、小さな店だから二人の板前は要らないと、雇って欲しいと訪れた安五郎の頼みを断ったのだ。それなのに、今度は突然、お彩との結婚を前提にした上で店を手伝ってくれと言う。我ながら、身勝手な願いだとは判っている。しかし、現段階で、喜六郎はこれくらいしか妙案が浮かばない。
安五郎と娶せるというのは、お彩の幸せだけではなく、お彩とお美杷を京屋市兵衛の手から守る手段として考え出した案だった。むろん、お彩の方の気持ちもあるにはあろうが、まず、その前に安五郎に大方の事情を話しておかねばならない。
安五郎はと見れば、随分と考え込んでいるようだ。無理もない話だと喜六郎は思った。つい数日前には、小さな店だから二人の板前は要らないと、雇って欲しいと訪れた安五郎の頼みを断ったのだ。それなのに、今度は突然、お彩との結婚を前提にした上で店を手伝ってくれと言う。我ながら、身勝手な願いだとは判っている。しかし、現段階で、喜六郎はこれくらいしか妙案が浮かばない。
安五郎と娶せるというのは、お彩の幸せだけではなく、お彩とお美杷を京屋市兵衛の手から守る手段として考え出した案だった。むろん、お彩の方の気持ちもあるにはあろうが、まず、その前に安五郎に大方の事情を話しておかねばならない。

