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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第36章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の弐

「お前を男と見込んでの願いだ。よく考えてこの場で返事をくれねえか」
「そりゃア、大恩ある喜六郎さんのたっての頼みとなれば、むげにお断りもできませんが、今、この場で返答をというのは、また、あまりにも急なお話ですね」
喜六郎の口調が切羽詰まった響きを帯びる。
「あの娘(こ)と所帯を持っちゃくれねえか」
「え」
安五郎の切れ長の眼(まなこ)が見開かれた。
「いや、いくら何でも夫婦(めおと)になるという話までをここで決めちまおうなんて言ってるわけじゃねえ。そこまでせっつきはしないが、あの娘との縁談(はなし)を頭ン中に入れた上で、しばらくこの店で板前として働いちゃくれねえか」
「そりゃア、大恩ある喜六郎さんのたっての頼みとなれば、むげにお断りもできませんが、今、この場で返答をというのは、また、あまりにも急なお話ですね」
喜六郎の口調が切羽詰まった響きを帯びる。
「あの娘(こ)と所帯を持っちゃくれねえか」
「え」
安五郎の切れ長の眼(まなこ)が見開かれた。
「いや、いくら何でも夫婦(めおと)になるという話までをここで決めちまおうなんて言ってるわけじゃねえ。そこまでせっつきはしないが、あの娘との縁談(はなし)を頭ン中に入れた上で、しばらくこの店で板前として働いちゃくれねえか」

