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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第36章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の弐

板前としての腕もなかなかなものだと、平素から料理の道に関してだけは人一倍厳しい喜六郎が賞めていたのを、お彩はよく憶えていた。
喜六郎が十年勤め上げた店を辞め、心機一転、江戸に出てきたのは二十八のことである。「花がすみ」を始めたのもその頃であった。
「しかし、喜六郎さんの許可もなしに、そんなことはできねえ」
安五郎はよほどの義理堅い性分らしい。まあ、融通がきかないともいえるのだろうが、お彩は上辺だけ調子の良い人間よりは、よほど好もしいと思った。
喜六郎が十年勤め上げた店を辞め、心機一転、江戸に出てきたのは二十八のことである。「花がすみ」を始めたのもその頃であった。
「しかし、喜六郎さんの許可もなしに、そんなことはできねえ」
安五郎はよほどの義理堅い性分らしい。まあ、融通がきかないともいえるのだろうが、お彩は上辺だけ調子の良い人間よりは、よほど好もしいと思った。

