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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参

二人は黙って肩を並べて歩いた。
和泉橋のたもとまで来た時、ふいに市兵衛の歩みが止まった。
「無事で良かった」
市兵衛の声に、お彩は涙ぐんで頷いた。
もう二度と離すまいと漸く手許に帰ってきた愛娘を抱きしめた。
お彩は河津屋で丁重に扱われていたらしく、丸々とした顔は血色もよく、すやすやと寝入っていた。乳も十分に与えられていたのだろう。
お彩の眼から零れ落ちた涙の雫がお美杷の白いすべらかな頬を濡らす。
傍らに立つ市兵衛のまなざしはどこまでも穏やかで、いつもの冷たい光はなかった。
市兵衛はただ静かな瞳で母子の姿を見守っている。
和泉橋のたもとまで来た時、ふいに市兵衛の歩みが止まった。
「無事で良かった」
市兵衛の声に、お彩は涙ぐんで頷いた。
もう二度と離すまいと漸く手許に帰ってきた愛娘を抱きしめた。
お彩は河津屋で丁重に扱われていたらしく、丸々とした顔は血色もよく、すやすやと寝入っていた。乳も十分に与えられていたのだろう。
お彩の眼から零れ落ちた涙の雫がお美杷の白いすべらかな頬を濡らす。
傍らに立つ市兵衛のまなざしはどこまでも穏やかで、いつもの冷たい光はなかった。
市兵衛はただ静かな瞳で母子の姿を見守っている。

