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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参

河津屋仁左衛門はやはり、色々と市兵衛の身辺を探ってゆく中に、お美杷が伊勢次の子ではなく、市兵衛の子だという真実に辿りついたらしい。それゆえ、お美杷をさらい、脅迫の手段に使おうと思いついた―恐らく、その読みは外れてはいまい。
だが、市兵衛は河津屋を出てから後も、そのことについては触れようとはしなかった。
相変わらず鎮まり返ったその横顔からは、その心情を窺い知ることはできない。
もしかしたら、市兵衛もまた今は娘の無事に戻ってきたことをただ歓びたかったのかもしれない。そう考えるのは、所詮はお彩の甘さだろうか。
だが、市兵衛は河津屋を出てから後も、そのことについては触れようとはしなかった。
相変わらず鎮まり返ったその横顔からは、その心情を窺い知ることはできない。
もしかしたら、市兵衛もまた今は娘の無事に戻ってきたことをただ歓びたかったのかもしれない。そう考えるのは、所詮はお彩の甘さだろうか。

