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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参

「ホウ、やって来たかね」
河津屋は見た目は福々しい大黒様のような顔に、満面の笑みを浮かべた。だが、脂ぎった貌の中の細い眼は、けして笑ってはおらず、油断ならぬ光を放っていた。
仁左衛門の視線が再びお彩に向けられた。
「流石は氷の京屋を籠絡しただけはある。吉原の花魁にもこれだけの上玉はいねえ。私も是非、一度お相手願いたいものだ」
お彩を見るその眼には、いかにも好色そうな光を帯びていた。
「この女は私の女房だ。家内を侮辱する言葉は謹んで貰おう」
市兵衛は父親ほどの歳の男をひややかな眼で見返した。お彩はハッとして、傍らの市兵衛を見た。市兵衛の切れ長の双眸にいつもの蒼白い怒りの焔(ほむら)が見え隠れしている。
河津屋は見た目は福々しい大黒様のような顔に、満面の笑みを浮かべた。だが、脂ぎった貌の中の細い眼は、けして笑ってはおらず、油断ならぬ光を放っていた。
仁左衛門の視線が再びお彩に向けられた。
「流石は氷の京屋を籠絡しただけはある。吉原の花魁にもこれだけの上玉はいねえ。私も是非、一度お相手願いたいものだ」
お彩を見るその眼には、いかにも好色そうな光を帯びていた。
「この女は私の女房だ。家内を侮辱する言葉は謹んで貰おう」
市兵衛は父親ほどの歳の男をひややかな眼で見返した。お彩はハッとして、傍らの市兵衛を見た。市兵衛の切れ長の双眸にいつもの蒼白い怒りの焔(ほむら)が見え隠れしている。

