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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参

襖の向こうから現れたのは、渋い紺染めの紬の上下を着た男であった。上背はある方だろうが、とにかく身の丈だけでなく横幅もありそうだ。
でっぷりと肥えた太り肉の五十年輩の男―、この男が河津屋仁左衛門に相違ない。仁左衛門の眼が市兵衛を通り越して、お彩のところで止まった。あたかも着物を通して素肌を撫で回されているかのような不躾な視線がお彩に向けられた。そのいやらしげな眼に、お彩は身体中の膚が粟立った。
その視線から守るように、さりげなく市兵衛がお彩を後ろに隠し、河津屋の前に進み出た。
でっぷりと肥えた太り肉の五十年輩の男―、この男が河津屋仁左衛門に相違ない。仁左衛門の眼が市兵衛を通り越して、お彩のところで止まった。あたかも着物を通して素肌を撫で回されているかのような不躾な視線がお彩に向けられた。そのいやらしげな眼に、お彩は身体中の膚が粟立った。
その視線から守るように、さりげなく市兵衛がお彩を後ろに隠し、河津屋の前に進み出た。

