この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参

河津屋は日本橋通油町に軒を連ねるお店(たな)の一つである。その屋敷の大きさにおいては町人町(ちょうにんまち)の京屋には及ばないものの、江戸でも五指に入る大店であるという暖簾を誇るだけはある。広い庭を有した住まいは店舗も併せて、初代―つまり河津屋を興した先代精左衛門が贅を尽くしてこしらえただけに、人々の語り草となっていた。
特に当代の主仁左衛門は名うての女好きとしても有名で、吉原へ月に五、六度は繰り出しては、お職を張る花魁を名指しするばかりか、惣仕舞いといって店ごとすべて買い切って遊ぶという豪勢な遊びっぷりが評判にもなっている。
特に当代の主仁左衛門は名うての女好きとしても有名で、吉原へ月に五、六度は繰り出しては、お職を張る花魁を名指しするばかりか、惣仕舞いといって店ごとすべて買い切って遊ぶという豪勢な遊びっぷりが評判にもなっている。

