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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参

―河津屋は心底から、京屋(うち)が持っている鑑札が欲しいのさ。それが手に入るまで、お美杷を殺したりはしねえ。因業で欲深な男だが、それくらいの計算はできねえほど馬鹿じゃねえ。良いか、商談というものをまとめるには時と場所をじっくりと選ぶ必要があるんだ。ただやみくもに相手方に突っ込んでゆけば良いというわけでもない。殊にこういったややこしい話となりゃあ、朝が来て、すっきりとした気持ちの方が頭も働きやすいのさ。こんな夜にいきなり乗り込んでいって、まとまる話もまとまらなくなっちゃあ、困るだろう?
妖艶に微笑んだ表情は、いかにも「凄腕」と年配の同業者からも怖れられる商人の顔そのものであった。
妖艶に微笑んだ表情は、いかにも「凄腕」と年配の同業者からも怖れられる商人の顔そのものであった。

