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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第33章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の弐

内心の動揺をつとめて押し隠し、お彩は小さくかぶりを振った。
「私は伊勢次さんを愛していました。伊勢次さんは、あなたとは違った。いつも優しい良人で、お美杷の良い父親であろうとしていました。商いのことしか頭にないあなたとは大違い」
「それが伊勢次に惚れた理由だというのか」
市兵衛の言葉は、どこまでも容赦がない。
もうほんのひと突きすれば、お彩がかろうじて保っている上辺だけの冷静さは脆くも一瞬にして潰えるはずであった。
沈黙があった。
お彩はか細い声で言った。
「私は伊勢次さんを愛していました。伊勢次さんは、あなたとは違った。いつも優しい良人で、お美杷の良い父親であろうとしていました。商いのことしか頭にないあなたとは大違い」
「それが伊勢次に惚れた理由だというのか」
市兵衛の言葉は、どこまでも容赦がない。
もうほんのひと突きすれば、お彩がかろうじて保っている上辺だけの冷静さは脆くも一瞬にして潰えるはずであった。
沈黙があった。
お彩はか細い声で言った。

