この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第33章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の弐

すべてを調べ上げた。老舗の暖簾を傷つけることを怖れ、世間体をはばかってか、この女房は目下のところ、近くの温泉地で病気療養中ということになっている。
むろん、市兵衛は、駆け落ち云々と話の微に入り細に入った部分まで話しはしなかった。そこは、彼なりにお彩の心中を考慮したのだろう。ただ、河津屋がお彩の起こした今回の家出事件について入念に調べ上げた上で、お美杷を脅しの種に使おうと目論んだのだ―とだけ話すにとどめた。
「考えてみりゃあ、いかにも、あいつのやりそうな薄汚ねえ手だ。恐らく、子どものことも隠密裏に調べてゆく中に突き止めたんだろう」
市兵衛が吐き捨てるように言った。
むろん、市兵衛は、駆け落ち云々と話の微に入り細に入った部分まで話しはしなかった。そこは、彼なりにお彩の心中を考慮したのだろう。ただ、河津屋がお彩の起こした今回の家出事件について入念に調べ上げた上で、お美杷を脅しの種に使おうと目論んだのだ―とだけ話すにとどめた。
「考えてみりゃあ、いかにも、あいつのやりそうな薄汚ねえ手だ。恐らく、子どものことも隠密裏に調べてゆく中に突き止めたんだろう」
市兵衛が吐き捨てるように言った。

