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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐

だが、眠っているのか、何の答えもない。お彩は格別訝しみもせず、そのまま家の中に入った。
背に負うたお美杷が小さなくしゃみをする。今日は弥生も十日過ぎとは思えないほどの寒さだ。空には鉛色の雲が低く垂れこめ、真冬のような空模様である。
外は早くも夕闇が垂れ込め始めていた。おきわの身体に障ってはと、出かける前に火鉢に炭を足していったのだが―。
この寒さでは、おきわには、さぞこたえるに相違ないと思えば、お天道様が恨めしい。
「おっかさん、眠っていなさるんですか」
お彩が声をかけても、眼を閉じているおきわは微動だにしない。その時、お彩の中に嫌な予感が走った。
背に負うたお美杷が小さなくしゃみをする。今日は弥生も十日過ぎとは思えないほどの寒さだ。空には鉛色の雲が低く垂れこめ、真冬のような空模様である。
外は早くも夕闇が垂れ込め始めていた。おきわの身体に障ってはと、出かける前に火鉢に炭を足していったのだが―。
この寒さでは、おきわには、さぞこたえるに相違ないと思えば、お天道様が恨めしい。
「おっかさん、眠っていなさるんですか」
お彩が声をかけても、眼を閉じているおきわは微動だにしない。その時、お彩の中に嫌な予感が走った。

