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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐

その日の夕刻。
お彩は、近所の八百屋から戻ってきた。今夜は、おきわの好物だという大根の煮付けと菜の花のお浸しにするつもりであった。菜の花は近くに自生していたのを摘んだものだが、大根は店屋で新鮮なものを買ってきたのだ。
大根の煮付けは、伊勢次の好物でもあった。そんなことを懐かしく思い出しながら帰ってきたお彩は、腰高障子を開けながら、おきわに声をかけた。
「ただいま帰りました。おっかさん、遅くなっちまって、済みません。八百屋のおかみさんとちょいと話し込んでしまったんですよ。すぐに夕ご飯にしますから、待ってて下さいね」
お彩は、近所の八百屋から戻ってきた。今夜は、おきわの好物だという大根の煮付けと菜の花のお浸しにするつもりであった。菜の花は近くに自生していたのを摘んだものだが、大根は店屋で新鮮なものを買ってきたのだ。
大根の煮付けは、伊勢次の好物でもあった。そんなことを懐かしく思い出しながら帰ってきたお彩は、腰高障子を開けながら、おきわに声をかけた。
「ただいま帰りました。おっかさん、遅くなっちまって、済みません。八百屋のおかみさんとちょいと話し込んでしまったんですよ。すぐに夕ご飯にしますから、待ってて下さいね」

