この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
歪んだ三重奏 ~ドS兄弟に翻弄されル~
第29章 契約の熱

「……!」
「あんたは早く…っ、車に乗れ」
僅かに息をきらしたカルロは、戦闘の余韻はないまますぐに車に戻ってきた。
呆然とするミレイより先に運転席に回り込み、さっさと座って扉を閉める。
「おい…」
「……っ」
いけない、急がないと。
まだ追っ手が来るかもしれない、早く逃げないと。
しかし
カツン──
静かな駐車場に靴音が響いて、車に乗ろうとする足を止めてミレイは振り返った。
「ジンさん…!」
そこには会場にいた筈の彼が立っていて、少しの距離を置いてこちらを見ていた。
「相手にするな。…さっさと乗れ」
「は い…っ」
と言ってもすぐに二人を止められるような近さじゃない。
カルロは彼を無視し、邪魔をされる前に逃走しようとする。
動きを止めていたミレイも思い直して助手席に座ろうとした。だが
「十数年ぶりに再会した実の娘を手元に引き取ったかと思えば。──…こうもすぐに、嫁に出す事になろうとはな」
「……!!」
怒りとも違うジンの言葉を背中に投げかけられて、彼女はまた止まってしまった。
すでに車に乗り込んでいるカルロは、そんなミレイを急かすこともせず…かと言って、何か言葉をかけることもしなかった。
「……」
グローブを付けた片手をハンドルに添えて黙っている。

