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夢のその先…
第19章 躊躇

「ひなちゃん…僕の言う事は…
信用出来ない…何一つ…信じられない?」
匡哉は誠実に…朝陽を扱ってくれている
だけど…信じられない気持ちの方が大きかった
「匡哉さんは…憧れの人だった
姉さんの恋人で…誰からも愛され慕われていた
私は…そんな匡哉さんに憧れていた…
嘘でも…良いから…貴方の側にいたかった…」
朝陽は…当時の苦しい胸のうちを…話した
「ひなちゃん…何もかもなくした僕の話を…
聞 いて欲しい…
身勝手だと罵られても良い…
君を…失ったあの日から…
僕は君をずっと待っていた
君を見付けたなら…僕の止まった時間は…
動くと想っていた…
だけど…ひなちゃん…
僕は… 家の為に結婚をした
君を待っていたのに…
待っていられず…結婚をした
最初から…その結婚は間違いたと解っていた
僕は…飾りにしかなれなかった
良き夫…妻を愛する…夫を演じて…生きてきた
父の会社を守るために…にね
僕は…結婚をしたのに…
会社は倒産した…
父は…その夜…首を吊って…死んだ
母はショックで…体を壊し… 入院して…
そのまま帰らぬ人になった
僕には…もう肉親は…いない
この世で…肉親と呼べる人間は…
誰もいない
僕に失うものなんて…何もない
何もないんだよ…ひなちゃん」
匡哉の口から…
飛び出す言葉は…
幸せに生きていた訳じゃない日々だった

