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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第9章 小平太という男
「それは褒め過ぎだわ」
「いや、そんなことはない」
 小平太は大真面目な顔で言い募る。
「山桜には媚びない美しさがある。楚々としていながら凜としたその姿が薫ちゃんみたいだと思って。なんて、俺の柄じゃないかな。それで山桜の櫛が眼について、考える間もなく決めたんだ。芙蓉石もこの辺りでは珍しいものだしね」
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