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eyes to me~ 私を見て
第55章 独りぼっちの歌姫



『剛さんは昔から頑固だからね……私に当て付けて特別な人を作らない、という訳じゃないだろうとは思ってたけれど……もし……私のせいで……』

 そこで菊野が声を詰まらせたので、美名は胸が痛くなった。
 何秒間かの沈黙の後、息を整えて菊野が続ける。

『私の……せいで、剛さんが……一生……誰も愛せなくなってしまったら……
 どうしよう……て、思ったりしたの……』
「菊野さん……」

 美名も喉が詰まり、涙が込み上げて来る。

『だから……剛さんが……美名さんに廻り会えた事が……本当に嬉しいの……』

 胸の奥の何処か、脆く柔らかい場所をキュンと掴まれた感覚に、美名は戸惑った。
 菊野の言葉には裏表が一切無く、どこまでも素直に美名の心の中へと入って行く。そして剛に対して感じていたわだかまりが少しずつ解けて行くかの様だった。


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