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退魔風紀 ヨミ ~恥獄の学園~
第1章 ヘイワード国際学園の怪
(……とにかく、ギニーは無視して、彼女を助けないと)

 そう判断し、吊るされた少女を解放しようと傍へ寄り、縄をほどきにかかる。その途端、ギニーが金切り声を上げた。

「アアアアアー! なにするおぉ!」
「ほどいてあげるのよ。見ていられないわ。彼女は無関係なんでしょう?」
「やめろおぉぉお! ゆるさぁんっ!」
「キャアッ!」

 ギニーがいきなり体当たりし、突き飛ばされて床に転がった詠の上にのし掛かってくる。背が低いとはいえ、高校男子の力だ。太っている分、体重もある。詠はそのまま押さえつけられてしまった。

「くっ……は……放しなさい」
「お、お前、魔物の味方かお……」

「違うわ! 一般の人を巻き込まないように魔を粛すのが退魔風紀のやり方。大体、あなたのやっていることは……はっきり言って犯罪よ」

「じゃあ……お前が替わりになれお」
「……えっ?」
「人形みたいな大きな目してるな、お前。睫毛も長いし唇もプニプニしててセクシーだお……」

 息がかかるほどの至近距離でギニーの血走った目が詠を見つめる。舐めるような視線が詠の顔から、長くて白い首筋、身体へと下っていき、そして、スレンダーな体形に対して少し大きめの詠の胸の膨らみの、荒い呼吸に合わせて上下する様に釘づけとなる。

「……ソー・ナイス・ティティ(いい乳してるじゃねーかお)」
「なっ……」

 あまりに直接的で下品な物言いに、詠は顔を赤らめる。面と向かってそんな卑猥な言葉を言われたことなど一度もない。
詠の羞恥と動揺の色に、口の端を緩ませてギニーが言葉を継いだ。

「……この媚薬、お、お前が飲めお。替わりに囮になるなら、ヘレンは放してやってもいいお……エシシッ!」

(……何を言い出すかと思えば!)

 その提案の卑劣さ、汚らわしさへの怒りで詠の美しい顔が歪む。しかし、抑えつけられていては契印が切れない。どこかに魔が潜む状況でこの状態はまずい。ここは取引に応じてでも急場を凌ぐべきか――


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