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先生、早く縛って
第36章 本気と勇気

『――実はもともと、私が嗜好とするSMプレイは愛奴隷の世界のものとは全く異なります。それでもこの本を一度は目にしたかった……そう、初めは好奇心だけで探し求めていたのです。
でも、伝手を求めるもなかなか手に入れられず……そうこうしているうちに、ぜひともこの手にしたいという気持ちがどんどん高まっていきました。ですから数年がかりで思いが叶った時は本当に嬉しかった……
しかし実際に読んでみると、あることを感じました。その世界観には大変心惹かれるものがありました。けれどこんな話は絵空事だろうと……所詮、小説の世界のことでしかないと思ったのです。
でも貴女からの御手紙を拝見して、先生と貴女との関係の中にダンテス卿とヴィオラの姿を見ました。私は本当の意味でこの本を理解していた訳では無かったと気付いたのです。
この小説は、傷付いた貴女には酷な結末になるかもしれません。それでも私は、貴女にこの本を読んで欲しい。貴女こそがこの本を持つべきだと思いました。貴女の大切な人がこの本を愛し、そしてその上で貴女を愛奴と呼び、導いたことを忘れないでください。
事情があって別々の道を歩かれているお二人です。簡単にはいかないことも多いと思います。でも、貴女が過ごした日々を後悔しないでください。
この本があなたの勇気になることを願っています――』

