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唇に媚薬
第8章 嫉妬姫
「…………」
葵の視線から逃れるように、抱きついたまま胸に顔を埋めた。
入り過ぎのエレベーターは人員オーバーで
なかなか扉が閉まらない。
「……蘭」
ボリュームを落とした低い声が、頭の上で聞こえる。
既に飲んでいて2件めへ向かう…といった人達が多いらしく
周りは酔った客で騒がしい。
「………っ」
バクバクと、大きくなる鼓動。
トレンチコートから、ふわっと葵のセクシーな香りが漂ってきた。
……どうしよう、変な気分になってきちゃった。
って、さっきからずっと変なんだけど。
背中に回した片方を、なぞるように下へと下げていって
さわさわと擦る私の手。
「……おい」
「………」
「お前の手、やらしいんだけど?」
軽く笑いながら顔を近付けて
私の耳元で葵が囁く。
……だって、勝手に動いちゃうの。
体が燃えるように熱い。
どうすればいいの?

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