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唇に媚薬
第8章 嫉妬姫
「蘭、来たぜ」
葵に呼ばれて、ハッと我に返る。
1階にエレベーターが到着して、扉が開いた。
ほぼ先頭にいた私達は、出ていく人達と入れ替わりで中に入ると
葵に手を引かれて、1番奥へと進んだ。
その後に続いて、次から次へと人が押し寄せてくる。
「……ありがと」
エレベーターの角に、背中を付けると
頭の上で、葵の右腕が壁を支えて隙間が出来た。
「あ? 何が?」
「……ううん」
何が?なんて、涼しい顔してトボけてるけど
私を覆うようにして、人の波から守ってくれている。
その体にすっぽりと包まれて、向かい合う形で密着した。
「………」
近過ぎて、ドキドキが増してくる。
体が熱くて、おかしい。
……そっと、手を伸ばして
葵の背中に手を回した。
「………!」
葵がピクッと反応する。
心臓の音が、伝わってしまうほどに
私は更に強く体を押し付けた。

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