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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第4章 嵐の夜
 だが、さつきは昔から切り替えも頭の回転も速い女だった。乳母は更に膝をいざり進め、声を落とした。
「どこのどなたさまかをお伺いしてもよろしいのでしょうか?」
 これには小さくかぶりを振ることで応えた。さつきは予め予測していたらしく、今度は落胆した様子ではなかった。
 彼女はさっと立ち上がると、そのまま部屋を突っ切り、扉に手を掛けた。
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