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Only you……番外編
第15章 寂しげな横顔

私は前にもまして副社長を警戒していた。
前に女子社員に妙な話を聞いた後もそうだったが、今回は目撃してしまっただけあって、私は我が身の危険も感じていた。
手ごろな場所にいたら騙される。そう感じていた。
「なぁ? りん、最近俺のこと避けてない?」
人の気も知らないで、そんなことを呑気に尋ねてくる。
私はむっとして言い返してやった。
「そんなことはありませんが?」
しかし言葉とは裏腹に、明らかに怒りが込められていた。自然と入り込んでしまうのだ。
副社長は苦笑いしながら私を見ていた。
その視線を斜め前から感じてはいたが、あえて気付かない振りをしておく。ここで目を合わせていては、また何が起こるか分からない。
「避けてないんだったらさ、今晩付き合えよ」
――なにぃ!!!
「……どこへですか?」
冷静に対応しておく。しかし内心、心臓がばくばくいっていた。
まさかこんなに早く、こういう展開になるなんて思ってもみなかった。なんたって、私が入社して今日でまだ2ヶ月。いくらなんでも手を出すのが早すぎる。
「怪しいところじゃないんですけど……」
副社長はしょんぼりとうなだれていた。
無意識のうちに私は副社長を睨みつけていた。
それを見てしまえば、なんだか断る気が萎えてくる。
「……」
その横顔は後ろの窓から差し込む日差しに照らされて、金色に輝いて見えた。とても美しく、それでいて儚げで、私は心臓が鷲掴みにされたような衝撃を受けた。かつてこんなに綺麗で悲しい絵を見たことがあるだろうか。もう既に、それは単なる横顔ではなく、1つの芸術作品だった。
「いいですよ」
「ホント!?」
気がつけば私はそんなことを口走っていた。言ってしまってから取り消すことなどできず、満面の笑みを浮かべる副社長にただ愛想笑いしているしかなかった。

