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せめて夢の中だけでも
第38章 知らないあなたも私は知りたい。
その女性が、秋雨に腕を引かれこちらに向く。
下を向いて顔はあまり見えないが…
口元がへの字に曲がり何かに耐えているようだ。
「誰なの?」
少し強い口調で言うも、秋雨はいつもと変わらない穏やかな顔のままだ。
焦りなんて微塵も見せていない。
「…顔、あげなよ。」
優しい声を女性にかけると、その人はコクンと頷き
ゆっくりと顔を上げた。
その顔は…
綺麗に化粧をさら、カラコンに付けまつげ…
グロスがキラキラと輝いていて…どうみても…
可愛い女の子だった。
けど…私はすぐにわかった。
「花子ちゃん…?」
それは間違いなく、壱君だ。
「…邪魔しないでよ。」
小さく呟かれた壱君の言葉。
その言葉に笑って頭を撫でる秋雨。
状況がわからないのか何も言えない隼人に
状況を理解し…何も言えない私。
仁さんの言葉が思い出された。
『花子は秋雨が好きなんだ。』
好きって…そういう事なんだ…

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