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せめて夢の中だけでも
第31章 溢れる心と溢れた優しさ
「…どうして…」
「凛ちゃんが好きだから。
凛ちゃんに笑って欲しいから。」
私の髪を撫でながら煌は続けた。
「俺は…凛ちゃんを抱けない。」
「なら…あの時…私を抱いたのは…」
「秋兄だよ。」
涙が溢れてくる。
あの時の記憶が蘇る。
朝起きたら隣は煌くんだった。
服も着ていた…。
「なんで…」
「俺が呼んだ。秋兄が俺に電話してきたから。
少しでも会いたいんだって。
まさか…抱くとは思ってなかったよ」
苦笑いを向ける煌。
「その時に言われた。
凛ちゃんを頼むなって。
だから…言えなかった。
服を着せたのも秋兄だよ。
俺は凛ちゃんに、キス一つできない小心者だからね。」
「凛ちゃん…抱かれて幸せだっただろ?
ごめんね。うそ付いてて。」
私を首を横に振って
煌を抱きしめた。

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