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Only you……
第5章 麻都 3

俺は無言のまま、明を抱きしめる。すると明は体をよじって俺の方に向きを変え、胸にしがみついてきた。そしてそのまま、嗚咽を堪えながら静かに泣いていた。
俺には、明の涙の意味が分からなかった。
辛いことがあったからとか、やっと家に帰ってこれたからとか、そんな単純な理由ではなさそうだった。
優しく背中をさすると震える明の体を感じた。
「ふ……うっ、く……」
俺はなかなか泣き止まない明を抱き上げると、居間ではなく寝室へと運んだ。
明は足をばたつかせて怯えたが、すぐに落ち着くと俺の背中に掴まっていた。
「今日は疲れたろ? 寝といた方がいい」
ベッドの上にどさっと下ろすと、明の頭を撫ぜながら俺は言った。
明は涙目のまま俺を見上げていた。
その視線にどきっとするほどの色気を感じた。
「じゃ、俺はシャワーを……」
そう言いながら部屋を出ようとすると、明が俺の服の裾を掴み、制した。
俺が振り返ると、今にも零れてしまいそうな涙を浮かべて俺を見つめていた。そして静かに呟く。
「行かないで……」
声が震えている。
「お願い……抱いて?」
泣きながら懇願する明に戸惑ってしまう。ゆっくりと歩み寄るとベッドに座り、明を抱きしめる。
「そんなこと簡単に言うなって、前に言ったろ?」
静かに説く。きっと、抱かれたいと思うのは心が弱っているからだ。今焦ることはない。そう自分に言い聞かせた。でないとこんなに綺麗な明を前にして、自分を押さえていられる自信がなかった。
「か、んたんじゃ……ないよ」
体が痙攣を起こして上手く喋れないようだ。途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「それ、とも、オレって、汚いかな? ……抱く気に、なら、ない?」
ははっと笑う明を見ているのは苦しくて、きつくきつく抱きしめた。
「汚くなんかない! 明が望むのなら、今すぐにでも押し倒したいさっ」
明の耳元で強く囁く。明が俺を抱きしめる腕に、力が加わった。
「じゃあ、お願い……」
一旦明の体を離すと、真意を知りたくて瞳を見つめる。曇りのない瞳――いや、曇りすぎてもう真実など見えなくなっているのかもしれなかった。ただ真っ直ぐと、俺を見ていた。

