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Only you……
第5章 麻都 3

俺の左腕は5針縫う怪我だった。運良く神経を逸れてくれていたので、後遺症などは残らないだろうと言われた。後数ミリずれていたなら、左腕は機能しなくなっていたかもしれないとも。
俺はすぐに退院することができ、その日のうちに家に帰ることが出来た。しかし、明の方は、細かな検査が必要と言うことで1週間ほどの入院が必要だった。
幸い検査結果は問題なしで、心配された脳のほうも異常はみられなかった。
不幸中の幸いというやつだろう。
医者が言うには、明は体よりも心の傷が心配だということだった。
明の様子がすこしおかしいことがあったので、精神科の先生にお願いして心理テストをしてもらった時に言われた言葉だった。
「何か大きな不安と、辛い過去を持っているみたいですね。その過去がまた再現されることをとても恐れているようです」
この結果は明本人には伝えなかった。
ただ俺の胸の中にしまっておいた。俺が気をつけてやればいいことだろうから。
「た、ただいま……」
緊張したような声で、明は家の中に向かって言った。今日は明がついに退院した日。そして、久しぶりに家へと帰ってきた日。
「お帰り」
俺は明の後ろで、笑顔で言った。
後ろからでも明の笑顔が容易に想像できた。
「へへっ……」
天井を見上げながら、笑う明の目には、心なしか涙が浮かんでいるようだった。

