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異常性愛
第13章 塊

この男の洞察力は私の記憶を掘り起こし、私の胸懐にある鬱屈した塊(くれ)を掴み出して私に見せた。
そして一方的ではあるが、私を導こうとしている。
微かに父性を感じさせる亭主の態度に、疑問と ちょっとした嫌悪感を抱いた。
『先生・・・。
あなたこそどうして、そう私に拘るんです?』
『キミが好きだからだよ。
変な意味じゃないぞ。ほほほ!
似てるんだよ。私の若い頃と。』
『あなたとですか?』
『ほほほ!なんだその眼は。
迷惑かもしれんがそうなんだよ。
キミは私に似ている。
私も愛情を受けずに育ったクチだ。
今更、つまらん昔話はせんがね。ほほ。
猛勉強して医者になったんだな。
希望に燃えてね。
だが私は親に貰った強い体が幸いして
おおきな病気をしたことがない。
だからわからなかったんだな、
患者の苦しみが。
病を患う絶望感というものがわからなかった。

