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宵闇
第13章 衝動

「……ずるい」
再び振り向いて、そう言葉を投げつけた。
「え?」
戸惑ったような表情。
それを見たらなぜか少しだけ嬉しくなった。
「葉月くん、ずるい……!」
だからもう一度、口にする。
「え……意味わかんないんだけど……!」
傷ついた、と言わんばかりに自分の胸を押さえる葉月くんの顔は笑顔だ。
だから私もつい、笑ってしまった。
葉月くんと一緒だと、いやなことも何もなくなっちゃう感じがする。
悩んでても、そんなのたいしたことじゃなかったのかな、って思わせてもらえる。
「どうしよう……」
はあ……と深く息を吐いた。
「こんなに幸せでいいのかなあ」
「……困った口調でずいぶん可愛いこと琴音は言うんだね」
そう言う葉月くんの口調はとても嬉しそうだ。
そのまま覆い被さるようにして口づけてくる。
それは、ちゅっ、と……軽いそれだったけれど。
「……きっと、僕の方が幸せだよ」
葉月くんのその熱を帯びた囁きが、私の心をさらに熱くしていく。
「琴音をやっと手にいれた」
腕を辿るように、指先へとそっと撫でられて。
「……ずっと、触れたかった」
指を絡めるようにして、そのまま後ろへと持っていかれる。
葉月くんがその指を自分の唇まで導いて、そのまま口づけるまでを目の当たりにした私の口からはたまらず息が漏れた。
葉月くんはそんな私に視線を寄越して、私を見ながら……まるで見せつけるように指に舌を這わせてくる。
……こくり、とたまらず喉を鳴らしてしまった。
葉月くんにそれが聞こえてしまったかもしれないと思うと、ますます顔が熱くなってきて。

