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~散花~
第14章 前夜

半刻後――
玉蘭は自室に戻っていたが、体にはまだ霧の中を彷徨うような感覚が残っていた。
板間に寝転び、頬を床にすりつける。ひんやりとして気持ちよかった。
股の間に手を伸ばし、穴を触ってみる。もう丸薬の感覚はなかった。
玉蘭は朦朧としたまま這って厨子の抽斗を開けた。
秘薬の小瓶を探す。
(…あれ…おかしいな。確かにここに置いておいたはずなのに…)
数少ない私物。
替えの内衣や化粧道具をまさぐると、
コツン――
小瓶の倒れる音が聴こえた。
「こんなところにあったのね…」
小瓶を拾い蓋を開ける。いとおしい香りが鼻腔をくすぐった。
掌にたっぷりと薬をとり、既に充分濡れているそこに、さらに塗りたくる。
(明日はいよいよ帝と…。しっかり柔らかくしておかなきゃ)
玲利の長い指を思い出しながら玉蘭は、夕膳が運ばれてくるまで、ずっと甘い靄の中をたゆとうていた。
既に謀略にかけられていたことなど、つゆも知らずに――
14章 完

