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~散花~
第14章 前夜

「玉蘭さま」
「呂栢!!」
女蔵人の案内で鶯燕館に隣接する医房へ移動する途中、懐かしい声に呼び止められた。
うれしくて思わず駆け寄る。
呂栢は恭しく頭を下げた。
「いよいよ明日でございますな、おめでとう存じます。范貴人さまのお使いで参りました。范貴人さまにおかれましては、玉蘭さまがお健やかにお過ごしかどうか、心よりお気遣いあそばされております」
「ありがとう、とても元気よ。玲利さまもお変わりない?」
「はい、お健やかでいらっしゃいます。ですが…」
呂栢の顔が曇った。
そのとき、「あの、玉蘭さま?」と背後から女蔵人が声をかけてきた。少し苛ついているようだ。
「あ…ごめんなさい。あの、ここからなら医房もすぐそこですし、わたし、もう独りで行けますから…」
玉蘭は肩をすくめた。それを見て、女蔵人は一礼すると鶯燕館の方へ戻っていった。

