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毒舌
第17章 別離の刻
おりょうだけでは
まじないの札に阻まれ
部屋からは
出ることも叶わないが
この腕で抱えて
連れだそうとしたことは
何度もある。
だが
拐ってみたところで
弱い人間一人
自然の中では生き抜けない。
妖怪とは違う、
食事も寝床も
与えられなければ
生きていけないのだ。
「……ましてこんな雪の中に連れ出してもな、」
「なあに?」
おりょうが
ゆっくり伸ばした手を
受け止める。
「安心して暮らせる場所はねえのかよ。どっかの寺にでも逃げ込むとかよ」
「……トビ」
じっと見つめる眼差しが
妖艶に揺れた。
「私は死ぬまで逃げられはしないわ。逃げれば迷惑がかかるもの」

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