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近くて甘い
第57章 紳士と獣
「関根…」



「………なんですか…」



なるべく平静を装おうとする要に、光瑠は腹立たしいほどニタニタとした顔で迫る。




「───昨日お前が俺に言い放った言葉は、一体なんだったか…」



片眉を上げた要はふっと光瑠から視線を外した。





「さぁ…一々何を言ったかなど覚えていないので…」


訳の分からない周りはなにやら楽しそうな光瑠と、イライラしている要といういつもとは逆の二人の様子を興味深そうに眺めていた。





「きゃっ…」




フッと笑みを洩らした光瑠は突然真希のことを自分の方に引き寄せると、愛おしそうに彼女を見つめてその額にキスを落とした。




!?!?



「ちょっ…突然なんですか光瑠さんっ…たくさん人が見てるのにっ…」



突然のことに周りが要以外の人間が目を見開く。



呆れたようにため息をついた要に光瑠は妖しく笑った。



「どうした、関根…」




「────…」



「言ったらどうだ…?


“ 公私混同は、困る。会社は仕事をする場だ " と……」




「っ……………」





──────────────公私混同は、困ります。会社は仕事をする場です。





昨日の自分の言葉がはっきりと頭の中で響いた。
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