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乳牛メイドのホルスタイン あの、かけがえのない日々のこと
第3章 第2話 母を求めて
 12歳になり学苑の初等部の卒業を近く控えて、「坊ちゃま」は流行性感冒で週の途中から学苑をお休みしていた。

 一緒に球技に励んでいた学友の男の子から貰った感冒で坊ちゃまはひどく発熱していたけれど、普段から外で元気に遊んでいるだけあって回復は早かった。

 週末の今はようやく熱が引きかけている最中で、邸宅の2階の自室で寝台の白い布団に入っている坊ちゃまの汗を|拭《ぬぐ》いに訪れると坊ちゃまは布団の中で寝息を立てていた。


 綺麗な額に水を含ませた繊維の布を優しく押し当て、量が少なくなった寝汗を拭うと坊ちゃまの口元が動いて、四肢を軽く動かす坊ちゃまは夢の世界にいるようだった。

「ママ……」
「……」

 メイド服を着た36歳の私は寝台の|縁《へり》に腰掛けて、坊ちゃまが目を閉じたまま身動きをする姿を眺めていた。

 坊ちゃまは母を呼びながら両手を軽く震わせ、彼の口元は唇の形を歪ませながら何かを求めていた。

 そんな坊ちゃまを見ていると私の胸の中は坊ちゃまへの愛おしさで一杯になって、彼の孤独な身の上に想いを馳せた。


「ママ、ママ……」

 坊ちゃまが夢の世界で何度母の名を呼んでも、彼が思い出の中だけにいる母親と再び会うことはできない。

 私は坊ちゃまの従者であって、彼の母の代わりになることはできない。

 そして私は半亜人だから、坊ちゃまと一生を添い遂げる相手にもなれない。

 私が従者でなくても、もし半亜人でなかったとしても……
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