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助教 沙霧
第6章 仮面の日常
大学のキャンパスは、午前中の瑞々しい喧騒に包まれていた。
沙霧は、先ほどホームで感じた絶望的なまでの昂揚を、分厚いウールのコートの下に隠し、研究棟の重い扉を開けた。暖房の効いた廊下を歩くたび、体内に残る熱い震動が、彼女の冷静な判断力を削り取ろうとする。
化粧室に立ち寄り、鏡の中の自分を厳しく点検する。乱れた髪を整え、上気した頬を冷水で鎮める。首元までしっかりとボタンを留めた白いブラウスに、膝丈のタイトスカート。どこから見ても、一点の隙もない「優秀な若き研究者」の姿だ。
だがその布地の下で、自身の乳首が不埒に尖り、歩くたびに下着のレースと擦れてかすかな悲鳴を上げていることを、彼女だけが知っていた。
「瀬川先生、おはようございます。今日のゼミの資料、もう共有フォルダに上がっていますか?」
研究室室の入り口で、院生の女子学生が声をかけてきた。沙霧は足を止めず、わずかに顎を引いて答える。
「ええ。昨夜のうちにアップロードしておいたわ。各自、目を通しておくように伝えて」
「あ、はい! ありがとうございます」
沙霧の冷徹な、しかし有無を言わせぬ響きを持った声。女子学生は憧憬と畏怖の混じった視線で、沙霧の背中を見送った。その視線こそが、沙霧がこの場所で守り続けてきた「城壁」だった。
沙霧は、先ほどホームで感じた絶望的なまでの昂揚を、分厚いウールのコートの下に隠し、研究棟の重い扉を開けた。暖房の効いた廊下を歩くたび、体内に残る熱い震動が、彼女の冷静な判断力を削り取ろうとする。
化粧室に立ち寄り、鏡の中の自分を厳しく点検する。乱れた髪を整え、上気した頬を冷水で鎮める。首元までしっかりとボタンを留めた白いブラウスに、膝丈のタイトスカート。どこから見ても、一点の隙もない「優秀な若き研究者」の姿だ。
だがその布地の下で、自身の乳首が不埒に尖り、歩くたびに下着のレースと擦れてかすかな悲鳴を上げていることを、彼女だけが知っていた。
「瀬川先生、おはようございます。今日のゼミの資料、もう共有フォルダに上がっていますか?」
研究室室の入り口で、院生の女子学生が声をかけてきた。沙霧は足を止めず、わずかに顎を引いて答える。
「ええ。昨夜のうちにアップロードしておいたわ。各自、目を通しておくように伝えて」
「あ、はい! ありがとうございます」
沙霧の冷徹な、しかし有無を言わせぬ響きを持った声。女子学生は憧憬と畏怖の混じった視線で、沙霧の背中を見送った。その視線こそが、沙霧がこの場所で守り続けてきた「城壁」だった。

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