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助教 沙霧
第4章 研究の日々(2)
 午後からは、附属図書館の貴重書庫での作業があった。
 厳重に管理された暗い書庫の中で、白手袋をはめ、慎重に古写本を扱う。静寂の中で聞こえるのは、自らの衣擦れの音と、古びた紙が鳴らす微かな囁きだけ。

 沙霧は、ふと、この場所で誉に見つめられているような錯覚に陥った。
 
(彼はあの書庫の陰から、私のこの「仮面の日常」を嘲笑しながらじっと見ている。彼は知っている。どれほど高尚な議論を交わし、どれほど峻厳な態度をとっていても、私がこのストイックな衣服の下で淫らな妄想に乳首を尖らせ、秘部からは不埒な湿りを湧き出させていることを。。。)



 作業を終えて書庫を出る頃には、外はすでに薄暗くなっていた。沙霧は、逃げるようにして足早にキャンパスを後にし、帰路につく。
 電車の中、吊り革を掴む自分の手が、沙霧の目にはいつもより白く、脆そうに映った。周囲のサラリーマンや学生たちの視線が、コートの上からでも執拗に自分の輪郭をなぞる。いつもの沙霧なら不快でしかない「雑音」が、今は心地よい苦痛となって彼女を責め立てる。

(誉、あなたが私を「師」と呼ぶのなら、あなたはこの乱れた心をどう鎮めてくれるというの)

 帰宅し、明かりを点ける前に暗闇の中でスマートフォンを開く。ブログの管理画面。

 そこには、一通の新しいメッセージが届いていた。心臓の鼓動が、静かな部屋に不気味なほど響き渡る。沙霧は震える指で、その通知をタップした。
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