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あなたに抱かれたい
第9章 親子四人の生活
「ただいま」
鍵を解錠して拓哉が大きなトランクを引きずりながらドアを開ける。
「ねえ…私、何て言えばいいんでしょう?…
やっぱり『お邪魔します』かしら?」
「何を言っているんだ、もうこの家は久美子の家なんだ。他人行儀する方がおかしいだろ。やはり『ただいま』って言うのが筋なんじゃないかい?」
「そうね…そうよね」
久美子は意を決したように深呼吸をすると、拓哉に続いて「ただいま帰りました」と家屋の奥の間に向かって声をかけて拓哉の後に続いて玄関に入った。
「お帰りなさい」
息子の正弥が嬉しそうに二人を出迎える。
「茉優は?」
「あ、今コーヒーを淹れてくれている。二人ともコーヒーを飲むでしょ?」
「まあ!そんな気を使ってくれなくてもいいのに」
そういうことは拓哉の妻であり、茉優と正弥の母になるのだから自分がするべきだわと、久美子は上着を脱ぐと急いでキッチンに向かった。
「ごめんなさいね、気を使わせてしまって…」
後は私がやらせてもらいますと言って久美子は茉優をダイニングテーブルでゆっくり座っててと言ったが「コーヒーぐらい淹れれるから、久美子さんこそあっちに行って座っててよ」と久美子をキッチンから追い出した。
茉優は、久美子がこの家に来たからと言って、この使いなれたキッチンを久美子なりにアレンジされるのはまっぴらごめんだと思った。
今まで、女は自分一人で、このキッチンだけは自分の牙城だっただけに、今まで赤の他人だった久美子に荒らされたくはなかった。
「久美子、茉優がそう言ってくれているんだから僕の隣に座りなよ」
僕?僕ですって?
今までは「俺」と言ってのさばっていたくせに
何よ、急にいい子ぶっちゃって!
久美子に対してデレデレの情けない父親にも茉優はムカムカしていた。
「ねえ、ハネムーンって楽しかった?」
少しだけ場の空気が殺伐としかけたので、慌てて正弥がとりなすようにハネムーンのことに話題を振った。
「そりゃあ楽しかったさ。そうだ!久美子、旅行中の写真を子供たちに見てもらおうよ」
「そうね…」
久美子は気乗りではなかった。
なぜなら、二人だけの大切な思い出として本当は誰にも見せたくなかったからだ。

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