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あの日 カサブランカで
第2章 ーあの日 カサブランカでー

 約束の10時きっかりに、ガイドのモハメドがオーナーに連れられてふたりのところへやってきた。

 オーナーとひとことふたこと言葉を交わしてからモハメドは上手な英語で自己紹介をすると簡単な地図を渡してくれたが、土地勘がないふたりにはイメージがわかなかった。

 世界一の迷宮都市と言われているフェズの旧市街はガイドなしには歩けないと聞かされていたが、彼に案内されながら歩きだして初めてその理由が日本でもよく道に迷う麻美にはよくわかった。

 ふたりが泊っているリヤドのある旧市街の中は道が細く曲がりくねっているうえ高低差も多く車が入れない。

 主な物資運搬はロバに頼っていて、いたるところで見かけることができる。

 白い土壁にはさまれた人ひとりがやっと通れるような路地をモハメドは選ぶように連れながら歩くと、やがて露店の並ぶ小さなスークに案内してくれた。

「町の人たちはここで買い物を済ませます」

 彼がそう説明して八百屋の店の老婆と言葉を交わすと、老婆はふたりに笑顔で手を振ってくれた。

「あなたたちは日本人だと言ったら驚いてましたよ」

 モハメドはそう教えてくれた。

 


 ゆっくりしたペースだったが、午前中の2時間があっという間に過ぎ、彼は小さなレストランへふたりを誘った。

「奥さんは、辛いもの大丈夫ですか?」

 モハメドはふたりを夫婦だと思い込んでいたのだ。

 大丈夫です、と麻美は笑みを返しながら奥さんと言われたことを否定しなかったが、それを敢えて圭一も咎めなかったから、今日一日は彼の奥さまになっていようと思った。

 モハメドが選んだナンに似たメニューはそれほど辛くもなく、スパイスの香がアラブの異国にいる実感を掻きたてた。

 ガイドがいなければ立ち入ることができないいくつかのモスクや住居などを丁寧に連れ歩いてくれた彼が最後に案内してくれた自宅は、50帖ほどもあろうかという天井が高く広いタイル床のホールにペルシャ絨毯が敷き詰められ、壁際のニッチには家族が子を抱いて座っていた。

 暑さを防ぐため窓のないモロッコの典型的な実際の住宅を見ることができた麻美は、ここに来ることができてほんとうによかったと心からその時思ったのだ。

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