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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第10章 ラブラブデートで蕩ける身体。

 その恥ずかしさをどうにか回避するために、あたしはグラスに注がれているお水にまで手を出して、ひたすらちびちび飲み続ける。
 そうなったら次は無言になるのは必定で――。
 唯斗さん、あたしを黙らせる術をすでにお持ちのようでいらっしゃる。

 ――うう。
 唯斗さん、こういうところも大人です……。


 ようやく静かになったあたしの頃合いを見てなのか、映画館へ向かうことにしたんだ。

 休日なのに今日はラッキーだった。
 中央の良い席が取れちゃった。
 この映画はやっぱり夫婦やカップル層が多いみたい。
 上映時間が迫ってくると、次々と席が埋まっていく……。

 今日はお日さまもよく照っていて、外はとても暑いけれど、映画館の中はひんやりしている。
 きっと静かに観ている頃は少し肌寒くなっているんだろう。
 配られた膝掛けで少しは防げるね。

 上映のアナウンスの後に、フロア全体に低いブザーが鳴り響いた。
 証明がゆっくり消えていく――……。
 いよいよ始まるんだ!

 あのね、あたしね。
 この映画、すっごく楽しみにしていたんだよ?
 友達に一緒に観ようって誘っても拒まれて、かといって独りで観る勇気もなくて――。
 一緒に観られる相手が大好きな唯斗さんなんて夢みたい!
 すっごく嬉しくて、昨日も興奮して眠れないくらい楽しみにしていたんだ。

 だけど……。
 あんなに観たかった映画が――不思議。


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